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Problem

問題

Problem

\(\mathbb{R}\)を実数体とする。次の問いに答えなさい:

  1. \(\mathbb{C}\)を複素数体、\(N\geq 1\)を自然数とする。\(\mathbb{R}\)-代数の準同型\(\mathbb{C}\to \mathbb{R}[x]/(x^2+1)^N\)が存在することを証明しなさい。
  2. 一元生成\(\mathbb{R}\)-代数であって、\(\mathbb{R}\)-代数としての自己同型が有限個であるものの同型類をすべて求めなさい。

東大院試 2021年 専門数学 B2

Solution

(1)を示す。そのためには、次の主張を証明することが十分である:\(k\)を体、\(f\in k[x]\)を分離多項式、\(A\)を\(k\)-代数、\(I\subset A\)をイデアルとすると、任意の可換図式\[\begin{CD}k @>>> A/I^2 \\@VVV @VVV \\k[x]/(f(x)) @>{\varphi}>> A/I\end{CD}\]に対し、図式全体を可換にする射\(\psi:k[x]/(f(x)) \to A/I^2\)が存在する。これを証明するために、\(\varphi(\bar{x}) = \bar{a}, a\in A\)と置く。ただし\(\bar{(-)}\)は剰余環での像を表す。このとき、\(f(\bar{x}) = 0\)なので、\(f(a)\in I\)が成り立つ。すると、証明するべきことは次の通りである:\(A/I^2\)において\(f(a+\varepsilon) = 0\)が成り立つような\(\varepsilon \in I\)が存在する。

\(f\)は分離多項式なので、\(f,f'\)は互いに素である。従って、ある\(p,q\in k[x]\)が存在して、\(pf+qf' = 1\)が成り立つ。\(a\)を代入すると、\(q(a)f'(a) = 1 - p(a)f(a)\)が成り立つ。\(f(a)\in I\)なので、\(p(a)f(a)\)は\(A/I^2\)においてべき零元であり、従って\(q(a)f'(a)\)は\(A/I^2\)において単元である。特に\(f'(a)\)も単元である。そこで\(\varepsilon :\overset{\mathrm{def}}{=} - f'(a)^{-1}f(a)\)と置くと、\(\varepsilon\in I\)であり、さらに\(A/I^2\)において\[f(a+\varepsilon) = f(a) + f'(a)\varepsilon = 0\]が成り立つ。以上で証明を完了する。

(2)を示す。\(A\)を\(1\)元生成\(\mathbb{R}\)-代数とする。\(A = \mathbb{R}[x]/(f(x))\)と表す。もし\(f=0\)であれば、\(x\mapsto ax, a\in \mathbb{R}\)は\(\mathbb{R}[x]\)の自己同型であるため、\(A\)には自己同型が無限個存在する。\(f\neq 0\)である場合に、自己同型群が有限であるための必要十分条件を求めることが残っている。この場合、\(f\)はいくつかの二次式といくつかの一次式の積に分解するので、従って、\(A\)は、剰余体が\(\mathbb{C}\)で極大イデアルが一元生成のArtin局所\(\mathbb{R}\)-代数としての直積と、剰余体が\(\mathbb{R}\)のArtin局所\(\mathbb{R}\)-代数の直積に、\(\mathbb{R}\)-代数として分解する(極大イデアルが一元生成なのはPIDである\(\mathbb{R}[x]\)の剰余環となるからである)。(1)より、剰余体が\(\mathbb{C}\)で極大イデアルが一元生成のArtin局所\(\mathbb{R}\)-代数は\(\mathbb{C}\)-代数でもある。ここで次の事実に注意する:

\(k\)を無限体、\(B\)を剰余体が\(k\)で極大イデアルが一元生成のArtin局所\(k\)-代数とする。このとき、\(B\)が体でないならば、\(B\)の\(k\)-代数としての自己同型は無限個存在する。
実際、\(B\)の極大イデアルの生成元を\(m\)として、\(x\mapsto m\)により\(k\)-代数の射\(k[x]\to B\)を定めると、\(B\)がArtin局所環であることと極大イデアルの一元生成性からこれは全射となる。核はある\(N\geq 1\)により\((x^N)\subset k[x]\)と記述されるイデアルである。\(x\mapsto ax, a\in k\)により定まる\(k[x]\)の自己同型は\(k[x]/(x^N)\)の自己同型を引き起こす。\(k\)が無限体であることから、もし\(N\geq 2\)であれば、\(B\)の自己同型が無限個存在することがわかる。この事実を念頭におくと、Artin環\(A\)は体の直積に分解されなければならないことがわかり、\(A\cong\mathbb{C}^r \times\mathbb{R}^s, (r,s\geq 0\)となる。従って、求める同型類は\(\mathbb{C}^r\times \mathbb{R}^s\)である。以上で証明を完了する。

Problem

\(\mathbb{R}\)を実数体とする。次の問いに答えなさい:

  1. \(\mathbb{C}\)を複素数体、\(N\geq 1\)を自然数とする。\(\mathbb{R}\)-代数の準同型\(\mathbb{C}\to \mathbb{R}[x]/(x^2+1)^N\)が存在することを証明しなさい。
  2. 一元生成\(\mathbb{R}\)-代数であって、\(\mathbb{R}\)-代数としての自己同型が有限個であるものの同型類をすべて求めなさい。

東大院試 2021年 専門数学 B2

Solution

(1)を示す。そのためには、次の主張を証明することが十分である:\(k\)を体、\(f\in k[x]\)を分離多項式、\(A\)を\(k\)-代数、\(I\subset A\)をイデアルとすると、任意の可換図式\[\begin{CD}k @>>> A/I^2 \\@VVV @VVV \\k[x]/(f(x)) @>{\varphi}>> A/I\end{CD}\]に対し、図式全体を可換にする射\(\psi:k[x]/(f(x)) \to A/I^2\)が存在する。これを証明するために、\(\varphi(\bar{x}) = \bar{a}, a\in A\)と置く。ただし\(\bar{(-)}\)は剰余環での像を表す。このとき、\(f(\bar{x}) = 0\)なので、\(f(a)\in I\)が成り立つ。すると、証明するべきことは次の通りである:\(A/I^2\)において\(f(a+\varepsilon) = 0\)が成り立つような\(\varepsilon \in I\)が存在する。

\(f\)は分離多項式なので、\(f,f'\)は互いに素である。従って、ある\(p,q\in k[x]\)が存在して、\(pf+qf' = 1\)が成り立つ。\(a\)を代入すると、\(q(a)f'(a) = 1 - p(a)f(a)\)が成り立つ。\(f(a)\in I\)なので、\(p(a)f(a)\)は\(A/I^2\)においてべき零元であり、従って\(q(a)f'(a)\)は\(A/I^2\)において単元である。特に\(f'(a)\)も単元である。そこで\(\varepsilon :\overset{\mathrm{def}}{=} - f'(a)^{-1}f(a)\)と置くと、\(\varepsilon\in I\)であり、さらに\(A/I^2\)において\[f(a+\varepsilon) = f(a) + f'(a)\varepsilon = 0\]が成り立つ。以上で証明を完了する。

(2)を示す。\(A\)を\(1\)元生成\(\mathbb{R}\)-代数とする。\(A = \mathbb{R}[x]/(f(x))\)と表す。もし\(f=0\)であれば、\(x\mapsto ax, a\in \mathbb{R}\)は\(\mathbb{R}[x]\)の自己同型であるため、\(A\)には自己同型が無限個存在する。\(f\neq 0\)である場合に、自己同型群が有限であるための必要十分条件を求めることが残っている。この場合、\(f\)はいくつかの二次式といくつかの一次式の積に分解するので、従って、\(A\)は、剰余体が\(\mathbb{C}\)で極大イデアルが一元生成のArtin局所\(\mathbb{R}\)-代数としての直積と、剰余体が\(\mathbb{R}\)のArtin局所\(\mathbb{R}\)-代数の直積に、\(\mathbb{R}\)-代数として分解する(極大イデアルが一元生成なのはPIDである\(\mathbb{R}[x]\)の剰余環となるからである)。(1)より、剰余体が\(\mathbb{C}\)で極大イデアルが一元生成のArtin局所\(\mathbb{R}\)-代数は\(\mathbb{C}\)-代数でもある。ここで次の事実に注意する:

\(k\)を無限体、\(B\)を剰余体が\(k\)で極大イデアルが一元生成のArtin局所\(k\)-代数とする。このとき、\(B\)が体でないならば、\(B\)の\(k\)-代数としての自己同型は無限個存在する。
実際、\(B\)の極大イデアルの生成元を\(m\)として、\(x\mapsto m\)により\(k\)-代数の射\(k[x]\to B\)を定めると、\(B\)がArtin局所環であることと極大イデアルの一元生成性からこれは全射となる。核はある\(N\geq 1\)により\((x^N)\subset k[x]\)と記述されるイデアルである。\(x\mapsto ax, a\in k\)により定まる\(k[x]\)の自己同型は\(k[x]/(x^N)\)の自己同型を引き起こす。\(k\)が無限体であることから、もし\(N\geq 2\)であれば、\(B\)の自己同型が無限個存在することがわかる。この事実を念頭におくと、Artin環\(A\)は体の直積に分解されなければならないことがわかり、\(A\cong\mathbb{C}^r \times\mathbb{R}^s, (r,s\geq 0\)となる。従って、求める同型類は\(\mathbb{C}^r\times \mathbb{R}^s\)である。以上で証明を完了する。

Problem

問題

Problem

\(\mathbb{R}\)を実数体とする。次の問いに答えなさい:

  1. \(\mathbb{C}\)を複素数体、\(N\geq 1\)を自然数とする。\(\mathbb{R}\)-代数の準同型\(\mathbb{C}\to \mathbb{R}[x]/(x^2+1)^N\)が存在することを証明しなさい。
  2. 一元生成\(\mathbb{R}\)-代数であって、\(\mathbb{R}\)-代数としての自己同型が有限個であるものの同型類をすべて求めなさい。

東大院試 2021年 専門数学 B2

Solution

(1)を示す。そのためには、次の主張を証明することが十分である:\(k\)を体、\(f\in k[x]\)を分離多項式、\(A\)を\(k\)-代数、\(I\subset A\)をイデアルとすると、任意の可換図式\[\begin{CD}k @>>> A/I^2 \\@VVV @VVV \\k[x]/(f(x)) @>{\varphi}>> A/I\end{CD}\]に対し、図式全体を可換にする射\(\psi:k[x]/(f(x)) \to A/I^2\)が存在する。これを証明するために、\(\varphi(\bar{x}) = \bar{a}, a\in A\)と置く。ただし\(\bar{(-)}\)は剰余環での像を表す。このとき、\(f(\bar{x}) = 0\)なので、\(f(a)\in I\)が成り立つ。すると、証明するべきことは次の通りである:\(A/I^2\)において\(f(a+\varepsilon) = 0\)が成り立つような\(\varepsilon \in I\)が存在する。

\(f\)は分離多項式なので、\(f,f'\)は互いに素である。従って、ある\(p,q\in k[x]\)が存在して、\(pf+qf' = 1\)が成り立つ。\(a\)を代入すると、\(q(a)f'(a) = 1 - p(a)f(a)\)が成り立つ。\(f(a)\in I\)なので、\(p(a)f(a)\)は\(A/I^2\)においてべき零元であり、従って\(q(a)f'(a)\)は\(A/I^2\)において単元である。特に\(f'(a)\)も単元である。そこで\(\varepsilon :\overset{\mathrm{def}}{=} - f'(a)^{-1}f(a)\)と置くと、\(\varepsilon\in I\)であり、さらに\(A/I^2\)において\[f(a+\varepsilon) = f(a) + f'(a)\varepsilon = 0\]が成り立つ。以上で証明を完了する。

(2)を示す。\(A\)を\(1\)元生成\(\mathbb{R}\)-代数とする。\(A = \mathbb{R}[x]/(f(x))\)と表す。もし\(f=0\)であれば、\(x\mapsto ax, a\in \mathbb{R}\)は\(\mathbb{R}[x]\)の自己同型であるため、\(A\)には自己同型が無限個存在する。\(f\neq 0\)である場合に、自己同型群が有限であるための必要十分条件を求めることが残っている。この場合、\(f\)はいくつかの二次式といくつかの一次式の積に分解するので、従って、\(A\)は、剰余体が\(\mathbb{C}\)で極大イデアルが一元生成のArtin局所\(\mathbb{R}\)-代数としての直積と、剰余体が\(\mathbb{R}\)のArtin局所\(\mathbb{R}\)-代数の直積に、\(\mathbb{R}\)-代数として分解する(極大イデアルが一元生成なのはPIDである\(\mathbb{R}[x]\)の剰余環となるからである)。(1)より、剰余体が\(\mathbb{C}\)で極大イデアルが一元生成のArtin局所\(\mathbb{R}\)-代数は\(\mathbb{C}\)-代数でもある。ここで次の事実に注意する:

\(k\)を無限体、\(B\)を剰余体が\(k\)で極大イデアルが一元生成のArtin局所\(k\)-代数とする。このとき、\(B\)が体でないならば、\(B\)の\(k\)-代数としての自己同型は無限個存在する。
実際、\(B\)の極大イデアルの生成元を\(m\)として、\(x\mapsto m\)により\(k\)-代数の射\(k[x]\to B\)を定めると、\(B\)がArtin局所環であることと極大イデアルの一元生成性からこれは全射となる。核はある\(N\geq 1\)により\((x^N)\subset k[x]\)と記述されるイデアルである。\(x\mapsto ax, a\in k\)により定まる\(k[x]\)の自己同型は\(k[x]/(x^N)\)の自己同型を引き起こす。\(k\)が無限体であることから、もし\(N\geq 2\)であれば、\(B\)の自己同型が無限個存在することがわかる。この事実を念頭におくと、Artin環\(A\)は体の直積に分解されなければならないことがわかり、\(A\cong\mathbb{C}^r \times\mathbb{R}^s, (r,s\geq 0\)となる。従って、求める同型類は\(\mathbb{C}^r\times \mathbb{R}^s\)である。以上で証明を完了する。

Problem

\(\mathbb{R}\)を実数体とする。次の問いに答えなさい:

  1. \(\mathbb{C}\)を複素数体、\(N\geq 1\)を自然数とする。\(\mathbb{R}\)-代数の準同型\(\mathbb{C}\to \mathbb{R}[x]/(x^2+1)^N\)が存在することを証明しなさい。
  2. 一元生成\(\mathbb{R}\)-代数であって、\(\mathbb{R}\)-代数としての自己同型が有限個であるものの同型類をすべて求めなさい。

東大院試 2021年 専門数学 B2

Solution

(1)を示す。そのためには、次の主張を証明することが十分である:\(k\)を体、\(f\in k[x]\)を分離多項式、\(A\)を\(k\)-代数、\(I\subset A\)をイデアルとすると、任意の可換図式\[\begin{CD}k @>>> A/I^2 \\@VVV @VVV \\k[x]/(f(x)) @>{\varphi}>> A/I\end{CD}\]に対し、図式全体を可換にする射\(\psi:k[x]/(f(x)) \to A/I^2\)が存在する。これを証明するために、\(\varphi(\bar{x}) = \bar{a}, a\in A\)と置く。ただし\(\bar{(-)}\)は剰余環での像を表す。このとき、\(f(\bar{x}) = 0\)なので、\(f(a)\in I\)が成り立つ。すると、証明するべきことは次の通りである:\(A/I^2\)において\(f(a+\varepsilon) = 0\)が成り立つような\(\varepsilon \in I\)が存在する。

\(f\)は分離多項式なので、\(f,f'\)は互いに素である。従って、ある\(p,q\in k[x]\)が存在して、\(pf+qf' = 1\)が成り立つ。\(a\)を代入すると、\(q(a)f'(a) = 1 - p(a)f(a)\)が成り立つ。\(f(a)\in I\)なので、\(p(a)f(a)\)は\(A/I^2\)においてべき零元であり、従って\(q(a)f'(a)\)は\(A/I^2\)において単元である。特に\(f'(a)\)も単元である。そこで\(\varepsilon :\overset{\mathrm{def}}{=} - f'(a)^{-1}f(a)\)と置くと、\(\varepsilon\in I\)であり、さらに\(A/I^2\)において\[f(a+\varepsilon) = f(a) + f'(a)\varepsilon = 0\]が成り立つ。以上で証明を完了する。

(2)を示す。\(A\)を\(1\)元生成\(\mathbb{R}\)-代数とする。\(A = \mathbb{R}[x]/(f(x))\)と表す。もし\(f=0\)であれば、\(x\mapsto ax, a\in \mathbb{R}\)は\(\mathbb{R}[x]\)の自己同型であるため、\(A\)には自己同型が無限個存在する。\(f\neq 0\)である場合に、自己同型群が有限であるための必要十分条件を求めることが残っている。この場合、\(f\)はいくつかの二次式といくつかの一次式の積に分解するので、従って、\(A\)は、剰余体が\(\mathbb{C}\)で極大イデアルが一元生成のArtin局所\(\mathbb{R}\)-代数としての直積と、剰余体が\(\mathbb{R}\)のArtin局所\(\mathbb{R}\)-代数の直積に、\(\mathbb{R}\)-代数として分解する(極大イデアルが一元生成なのはPIDである\(\mathbb{R}[x]\)の剰余環となるからである)。(1)より、剰余体が\(\mathbb{C}\)で極大イデアルが一元生成のArtin局所\(\mathbb{R}\)-代数は\(\mathbb{C}\)-代数でもある。ここで次の事実に注意する:

\(k\)を無限体、\(B\)を剰余体が\(k\)で極大イデアルが一元生成のArtin局所\(k\)-代数とする。このとき、\(B\)が体でないならば、\(B\)の\(k\)-代数としての自己同型は無限個存在する。
実際、\(B\)の極大イデアルの生成元を\(m\)として、\(x\mapsto m\)により\(k\)-代数の射\(k[x]\to B\)を定めると、\(B\)がArtin局所環であることと極大イデアルの一元生成性からこれは全射となる。核はある\(N\geq 1\)により\((x^N)\subset k[x]\)と記述されるイデアルである。\(x\mapsto ax, a\in k\)により定まる\(k[x]\)の自己同型は\(k[x]/(x^N)\)の自己同型を引き起こす。\(k\)が無限体であることから、もし\(N\geq 2\)であれば、\(B\)の自己同型が無限個存在することがわかる。この事実を念頭におくと、Artin環\(A\)は体の直積に分解されなければならないことがわかり、\(A\cong\mathbb{C}^r \times\mathbb{R}^s, (r,s\geq 0\)となる。従って、求める同型類は\(\mathbb{C}^r\times \mathbb{R}^s\)である。以上で証明を完了する。